6月、営業先から帰った夜にボーナスの明細を開いて、思わず二度見しました。額面そのものは悪くない。けれど、そこから3人分の教育費と、毎月出ていく固定費を差し引くと、「投資に回すお金」なんてどこにも残っていない——2020年の緊急事態宣言まで、私はずっとそう思い込んでいました。50歳・営業職。妻と子ども3人の5人家族を、私ひとりの給料(1馬力)で支えています。転勤は3回、そのたびに身の丈以下の賃貸を選んで家賃だけは抑えてきました。それでも「NISAがいいらしい」と聞くたびに、心のどこかで「うちには”余裕資金”がないから無理だ」と蓋をしていたのです。
📋 この記事でわかること
- 「余裕資金がない」家計でも新NISAの積立原資を作る具体的な手順
- 固定費を”どの順番で”削ると一番早く原資ができるか(通信・保険・サブスク)
- 浮いたお金を使ってしまわず、自動で積立に流す仕組みの作り方
- 1馬力5人家族の私が2024年1月からの実績(330万→487.6万・+47.76%)で語る、続けられた理由
結論から言います。原資は「余裕ができるのを待つ」ものではなく、「固定費に作らせる」ものでした。この記事は、その考え方に切り替えてから、毎月コツコツ積み立てられるようになった私の実録です。まずは”入れ物”だけ用意しておくと、削った固定費がそのまま原資に変わっていく感覚が分かります。
📚 このシリーズの記事(固定費でNISA原資を作る)
- 【きっかけ編】「余裕がない」を固定費で解決
- 【手順編】固定費を削る順番
- 【設定編】浮いた固定費で少額スタート
- 【実録編】固定費を削って全額NISAへ(今読んでいる記事)
ボーナスから原資を作る方法は こちらのシリーズで解説しています。
「余裕がない」と検索する人が、実は一番つまずいているポイント
NISAを始められない人の悩みを追っていくと、私が抱えていたものとまったく同じ声にぶつかります。知恵袋やSNSで見かける、リアルな声を3つ挙げます。
「生活費を削ってまで積み立てるべきなんでしょうか。毎月がギリギリで、続けられる自信がありません」
「余裕資金がないのにNISAを始めていいのか不安。急な出費で解約したら、結局損する気がします」
「周りは月3万とか積み立ててるけど、うちは月5千円が限界。それって意味あるんですか?」
(※知恵袋・FP相談メディアに繰り返し寄せられる相談を、筆者が要約した代表的な声です。出典:積立NISAはやめたほうがいい?知恵袋の声とFPの答えほか)
3つに共通しているのは、「今の家計から”投資に回すお金”をひねり出そうとしている」こと。ここが最大のつまずきでした。変動費(食費や日用品)を我慢して原資を作ろうとすると、必ずどこかで反動が来て続きません。私も最初は「昼食を安くしよう」と考えましたが、営業職で外回りが多い身にはストレスが大きく、3週間で挫折しました。
💡 ポイント
原資は「変動費の我慢」ではなく「固定費の見直し」から作る。固定費は一度削れば、我慢しなくても毎月自動的に浮き続けます。ここが”続く原資づくり”の分かれ道でした。
なぜ1馬力の我が家でも、毎月の積立ができるようになったのか
答えはシンプルで、「毎月ずっと払い続けている固定費」に手をつけたからです。固定費は、一度見直せば翌月から自動的に効果が出て、しかも我慢が要りません。食費を5千円削るのは毎月つらいですが、通信プランを1回変えれば、以降は何もしなくても毎月浮きます。この”放っておいても浮く仕組み”こそ、忙しい会社員が積立原資を作る唯一の現実解だと、私は身をもって学びました。
私が見直したのは、通信費・保険・サブスク、そして教育費の4つ。理由は「効果が大きい順に、手をつけやすいものから」です。順番を間違えると挫折します(固定費を月1万円削減する方法もあわせてどうぞ)。
実際に削った固定費と、浮いた金額の内訳
数字がないと机上の空論になるので、我が家の実際の内訳を出します。金額は家庭ごとに違いますが、「どこを・どういう順番で・どれだけ削れたか」の形は参考になるはずです。
| 固定費 | 一般的な5人世帯の目安 | 我が家 | 毎月の差 |
|---|---|---|---|
| 通信費(家族4回線) | ワイモバイル 約11,000円 | 日本通信SIM 5,560円 | 約5,440円 |
| 生命保険 | 月1〜2万円(世帯目安) | 0円(未加入) | 約1〜2万円 |
| 教育費(高校生2人・塾/私立) | 2人分の塾 月4〜6万円(目安) | スタサプ2人分 月約3,600円 | 約4〜5万円 |
| サブスク | 個人プラン複数 月2,560円〜(1,280円×2人〜) | YouTube Premiumファミリー 2,280円(最大6人) | 約280円〜 |
| 合計 | — | — | 月5〜8万円 → 積立へ |
① 通信費:一番効いたのはここ
5人家族なので、通信費は”人数分”効きます。ここを見直すと、我慢ゼロで毎月まとまった額が浮きました。しかも一度きりの手続きで、翌月から効果が続きます。「効果が大きく、手をつけやすい」——通信費を最初にやるべき理由はこれに尽きます。
我が家は長いあいだ、家族4回線(大人2人+子ども2人)をワイモバイルで使い、通話料込みで毎月1万円近くを払っていました。品質には不満がなかったぶん、「まあこんなものか」と何年も明細を見ていなかったのです。そこを思い切って日本通信SIMに乗り換えました。20GBで月1,390円、しかも無料通話が70分付く。これを4回線で組むと、通話込みの実質月額が約11,000円から5,560円へ。毎月約5,440円、年間で6万円以上下がりました。暮らし方は何も変えていません。営業で外回りが多い私は通信が仕事に直結するので”安さだけ”では選びませんでしたが、ドコモ回線で日常利用は問題なく、この価格差なら十分でした。そして通信費のいいところは、一度切り替えれば以降は何もしなくても毎月自動的に浮き続けることです。この年6万円が、そっくり積立原資になりました。
② 保険:サラリーマンに生命保険は要らない、と考えた
正直に書くと、我が家は生命保険(掛け捨てを含む)に一度も入ったことがありません。加入しているのは自動車保険と火災保険だけです。乱暴に聞こえるかもしれませんが、私なりのロジックがあります。働き盛りのサラリーマンが亡くなる確率が高い場面は、大きく分けて「仕事中」か「自動車事故」。仕事中なら労災、自動車事故なら自動車保険でカバーされます。加えて、公的保障として遺族年金もあります。だとすれば、毎月の生命保険料は”漠然とした不安に対して払っているだけ”の固定費になりかねない——そう考えて、我が家は生命保険というコスト自体を最初から持たない選択をしました。
もちろん、これは万人向けの結論ではありません。労災が適用されない自営業の方や、公的保障の薄い働き方の方は事情が違います。大事なのは「家族を守るため」という言葉で思考停止せず、”自分の場合、どのリスクが公的保障や他の保険ですでにカバーされているか”を一度棚卸しすること。その結果、私の場合は生命保険ゼロが最適解でした。多くの世帯が毎月払っている保険料を我が家は持たない——このぶんが、そっくりそのまま投資原資になっています。金額が大きいぶん、家計へのインパクトも一番大きい判断でした。
③ サブスク:残したのは1つだけ
次にサブスク。子どもが増えるたびに何となく増えていった動画・音楽・アプリの月額を、一度すべて棚卸ししました。結論として、我が家が残したのは「YouTube Premium のファミリープラン」ただ1つです。月額2,280円で、同じ住所に住む家族を管理者を含めて最大6人まで登録でき、全員が広告なしで動画も音楽も使えます。5人家族の我が家は、これ1本で家族全員分をまかなえました。他は「使っているつもりで使っていない」ものばかりで、止めても生活は何も変わりませんでした。1つ数百円でも、5人家族×複数本だと積み上がります。これは削るというより”使っていないものを止めるだけ”なので、痛みゼロで浮きました。
④ 教育費:高い塾も私立も、我が家はスタサプ年2万円だけ
5人家族にとって、教育費は固定費の中でも最大級の重しです。ここに私は一番強い持論があります。我が家の学習費用は「スタディサプリ(スタサプ)だけ」。中学のころから使い続けていて、今は高校生2人分に加入しています。ベーシックコースは1人あたり年21,780円(月換算1,815円)なので、2人分でも年4万円ほど・月にならすと約3,600円。高額な塾にも、私立高校にも通わせていません。2人を塾に通わせれば月4〜6万円はかかりますから、その差はそのまま家計に残ります。
根底にあるのは、”良い学校や良い塾に行かないと良い授業が受けられない”という思い込みを捨てる、という考え方です。情報はすでに民主化されています。スタサプなら、トップクラスの講師の授業を、いつでもどこでも受けられる。うちの子は図書館やカフェなど、本人が集中できる場所で勉強しています。カフェ代1,000円くらい、塾代に比べれば安い投資です。決して有名校ではありませんが、子ども自身が「学校の授業やテストより分かりやすい」と漏らすくらい、スタサプは優秀でした。月数万円の塾代を”固定費として持たない”だけで、その差額がまるごと積立原資に変わります。
コスパが最強だと感じる理由は、料金だけではありません。この金額で、英語・数学・国語・理科・地理歴史・公民・情報の7教科までカバーしています。1教科ごとに料金がかかる塾とは、そもそも土俵が違うのです。しかも、これは我が家だけの評価ではありません。高校受験のときに私立高校をいくつも見学したのですが、「うちの高校はスタサプを導入しています」とPRしている学校が何校もありました。学校が正式教材として採用するレベルのものを、家庭でも同じ料金で使えるということです。
もう一つ、背中を押された出来事があります。塾に勤めている知り合いが、こう漏らしていたのです。「塾の講師は生徒数の獲得=塾の運営のほうで忙しくて、肝心の授業はアルバイトに任せていることもある」と。そのうえで、その知人自身が「それならスタサプのほうがいいよ」と勧めてくれました。あくまで一人の”中の人”の話なので一般化はできませんが、実際に子どもの成績で結果が出ている我が家にとっては、十分な後押しになりました。
✅ この順番をおすすめする理由
「効果が大きく手をつけやすい通信費 → 金額の大きい保険(我が家はゼロ)→ 痛みゼロのサブスク → インパクト最大の教育費」の順に見直すと、早い段階で”浮いた実感”が得られ、モチベーションが続きます。いきなり全部やると挫折します。
浮いたお金を”使わずに”積立へ流す仕組み
ここが一番大事です。固定費を削っても、浮いたお金が財布に残っていると、人はほぼ確実に使ってしまいます。私も最初の月は、浮いた分が生活費に溶けて消えました。そこで、「浮いたお金を先に投資へ移す」仕組みに切り替えました。
具体的には2本立てです。毎月5万円はクレジットカードで自動積立にして、手を動かさなくても引き落とされる状態にしました。もう1本は年初のボーナス積立で60万円。私の会社は夏のボーナスが少なく冬が多いので、冬のボーナスから60万円を取り分けておき、年が明けた1〜2月にまとめて買い付けます。この「毎月5万+年初60万」が、私の新NISAのマイルールです。
この「先に移す」の順番が肝心です。給料が入る → 生活費を使う → 余ったら積立、という順番では、私の家計では永遠に余りませんでした。そこで、給料が入ったらまず積立に回り、残りで生活する、という順番に固定しました。クレカ積立にしたのは、自分の意志の力に頼らないためです。毎月「今月は積み立てるか、やめておくか」と迷う余地をなくし、迷わなくても勝手に積み上がる状態にしておく。忙しい会社員にとって、これが一番続く方法でした。固定費で作った”浮き”と、この自動化の仕組みが噛み合って、はじめて原資づくりが軌道に乗ったのです。
積み立てているのはFANG+という米国のハイテク集中型のファンドです。オルカン(全世界株)ではありません。理由は、家賃・固定費を最小限に抑えて”守り”を固めているからこそ、”攻め”の集中投資を選べる、という自分なりの論理です。※集中型はリスクも大きいので、ここは万人向けではありません(後述のデメリット参照)。
やってみて分かったデメリット・注意点
⚠️ 注意点・デメリット
- 生活防衛資金を先に確保すること。原資づくりに夢中になって手元現金がゼロになると、急な出費で解約=損失確定になります。まず生活費の半年〜1年分を残す。
- FANG+のような集中型は値動きが大きい。私も2025年3月末には評価益が+7.8%まで縮み、2026年3月末も+16.3%まで落ちました。集中型を選ぶなら、この振れ幅に耐えられるかを先に自問してください。
- 削減額をそのまま積立に回すと、家計が再びギリギリになりやすい。浮いた分の全額ではなく、一部は生活の余白に残す判断も大事です。
こんな人におすすめ/おすすめしない人
✔️ こんな人におすすめ
- 「NISAはやりたいが、毎月の余裕資金がない」と感じている人
- 家族の人数が多く、通信費など固定費に削りしろがある人
- 変動費の我慢では続かなかった/挫折した経験がある人
逆に、生活防衛資金がまだ手元にない人、値動きの大きい商品で夜も眠れなくなるタイプの人は、まず現金の確保と、値動きの穏やかな商品から始めるほうが向いています。無理をして続かなければ本末転倒です。
体験談:330万→487.6万。暴落2回でも売らなかった2年半
正直に告白すると、2020年までの私は貯金残高すらまともに見ていませんでした。「退職まで惰性で生活できるだろう」という程度の感覚で、家計に無関心だったのです。それが変わったのは、緊急事態宣言で在宅時間が急に増えたとき。手持ち無沙汰の時間をすべてYouTubeでの情報収集に充て、そこで初めて新NISAやインデックス投資を真剣に知りました。今思えば、あの”暇な時間”はラッキーでした。
そして2024年1月、固定費で作った原資を握りしめて、初めての買い付けをしました。注文確定のクリックをするとき、実は手が震えていたのを今でも鮮明に覚えています。それだけ、私にとっては大きな一歩でした。
結果を数字で残します。2024年1月に始め、2026年6月末時点で投資額330万円が評価額487.6万円(+157.6万円/+47.76%)になりました。もちろん一直線ではありません。2025年3月末には評価益が+7.8%まで縮み、2026年3月末も+16.3%まで落ちました。その都度「売ってしまおうか」という誘惑はありましたが、家賃と固定費を最小限に抑えている安心感が支えになり、一度も売らずに積み立てを続けました。2026年5月末には+56.8%まで戻り、”売らなかった判断”が報われました。私のマインドは一貫して「インデックス(積立)が貯金代わり」。だからこそ、下がっても淡々と続けられたのだと思います。
月ごとの資産推移(急落した月も含めて全部)や、毎月5万+年初60万の具体的な設定方法は、別記事に細かくまとめています。数字の裏側まで見たい方はこちらもどうぞ。ボーナスをNISAにいくら入れる?2年半の実績と冬ボーナス60万ルール。
よくある質問(FAQ)
Q. 月5千円しか原資が作れなくても意味がありますか?
A. あります。新NISAのつみたて枠は少額でも始められ、家計に余裕ができたら増額・一時停止も自由です。まず”入れ物”を作り、固定費で原資を育てていくのが現実的です。
Q. 固定費を削っても、また使ってしまいそうです。
A. だからこそ「浮いたお金を先に自動で積立へ移す」仕組みにします。私はクレカ自動積立にして、財布に残さないようにしました。
Q. どのファンドを選べばいいですか?
A. 私はFANG+(集中型)ですが、これは家賃・固定費を絞って守りを固めた上での選択です。値動きに不安がある方は、まず全世界株などの分散型が無難です。
📝 まとめ
- 原資は「余裕ができるのを待つ」のではなく「固定費に作らせる」
- 削る順番は、通信費 → 保険(サラリーマンは公的保障で代替可)→ サブスク → 教育費(塾よりスタサプ)
- 浮いたお金は財布に残さず、自動積立で先に投資へ流す(私は毎月5万+年初60万)
- 生活防衛資金を確保し、集中型を選ぶなら値動きの振れ幅に耐える覚悟を
「余裕資金がない」は、始めない理由にはなりません。中小企業で出世コースからは早々に外れた私でも、固定費を1つずつ削って淡々と積み立てた結果、1馬力で”コーストFIRE”(もう無理に稼がなくても資産が育っていく状態)に手が届きました。特別な才能ではなく、親・学校・世間から刷り込まれた固定概念を捨てただけです。まずは”入れ物”だけ、今月のうちに。
新NISAの非課税枠は、その年に使わなかった分をあとから取り戻すことはできません。原資が作れた今月こそ、始めどきです。「余裕ができてから」と先送りしてきた過去の私に、一番伝えたい一言です。



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