📋 この記事でわかること
- 個人賠償責任保険が自動車保険・火災保険・クレジットカードの3方向から同時に消える仕組み
- 自転車事故の賠償が1億円では余裕がない根拠(判決額+弁護士費用+遅延損害金)
- 我が家が穴を塞ぐのにかかった実額と、実際の契約内容
- 今日5分で、自分の家に個人賠償があるか確かめる手順
3週間前に、このブログで「保険は自動車と火災だけです」という記事を書きました。生命保険も医療保険も学資保険も、人生で一度も契約したことがありません。その線引きに、いまも迷いはありません。
ただ、その記事を書いた1か月後に、私は自分の火災保険の中身をまったく把握していなかったことに気づきました。
きっかけは、子供が自転車でアルバイトに行くようになったことです。玄関を出ていく後ろ姿を見ながら、ふと「もしこの子が人をはねたら、うちはどうなるんだろう」と思いました。その日のうちに証券を全部引っぱり出して確認したら、我が家の個人賠償責任保険は、家族全員ぶんゼロでした。
この記事は、その穴に気づいてから塞ぐまでの記録です。実際の契約内容と、契約前に読んだ約款で分かったことを、数字ごと全部出します。
なぜ、気づかなかったのか
あとから並べてみると、穴は3方向から同時に開いていました。
- 自動車保険:前年に他社へ乗り換えたとき、個人賠償責任特約が付いてこなかった。価格差を見て「まあいいか」と外した記憶はあるが、乗り換えでそのまま消えた形
- 火災保険:賃貸用の月払いプランに入っていたが、いちばん安いプランで、個人賠償は対象外
- クレジットカード:付帯の賠償補償はあるにはあるが、上限が桁違いに小さい
どれも、単体で見れば間違った判断ではありませんでした。自動車保険から外したときは、我が家に自転車に乗る人間がいなかった。火災保険をスリムにしたのは、固定費を1円でも削ってNISAの原資にするためでした。
問題は、その判断を下したときの前提が、いつのまにか変わっていたことです。子供が高校生になり、自分で稼ぐようになり、雨の日も自転車で出ていく。前提が変われば、合理的だった判断は合理的でなくなります。私はそれを、契約書を1枚も開かないまま1年間放置していました。
「保険は自動車と火災だけ」という線引き自体は、いまも正しいと思っています。でも「入っている」と「守れている」は、まったく別のことでした。私は線引きを決めたところで満足して、中身を確認する作業をしていませんでした。
自転車の賠償は、いくらだと足りないのか
調べはじめて最初に見たのが、兵庫県が公開している自転車事故の高額賠償事例の一覧でした。ここに載っている金額を見て、正直、手が止まりました。
| 裁判所・年 | 事故の概要 | 賠償額 |
|---|---|---|
| 神戸地裁 平成25年7月 | 小学5年生が62歳女性と衝突し意識不明に | 9,520万円 |
| 東京地裁 平成20年6月 | 高校生と24歳会社員の自転車同士の衝突で後遺障害 | 9,266万円 |
| 横浜地裁 平成17年11月 | 携帯操作・無灯火の高校生が看護師と衝突し障害が残る | 5,000万円 |
いちばん上の事例は、加害者が小学5年生です。未成年に賠償能力はありませんから、監督義務者である親に請求が行きます。高校生の事例も複数あります。「子供だから」は、まったく守ってくれません。
💬 実際どうなのか
判決の最高額は9,520万円ですが、支払う総額はこれで終わりません。実務では認容額の1割程度の弁護士費用が損害として上乗せされ、さらに事故日から遅延損害金が積み上がります。9,520万円の事故なら弁護士費用だけで950万円前後。この時点で1億円を超えます。
そして私が最初に勘違いしていたのが、「1億円あれば足りる」という感覚でした。判決の最高額が9,520万円なら、1億で収まるように見えます。
でも、支払う総額は判決額そのものではありません。実務では認容額の1割程度の弁護士費用が損害として上乗せされ、さらに事故日から遅延損害金が積み上がります。9,520万円の事故なら、弁護士費用だけで950万円前後。この時点で1億を超えます。裁判が長引けば、さらに増えます。
実際、いま販売されている自転車保険を見ると、賠償の限度額は3億円か無制限が主流で、1億円は下のほうです。差額は年に数百円から千円台。1億で妥協する理由が、価格の面からもありません。
クレジットカードは、あてにできませんでした
穴に気づいたとき、私が最後の望みをかけたのがクレジットカードでした。「たしか付帯保険に賠償のやつがあったはずだ」と。
結果は、想像していたのとかなり違いました。多くの家庭が持っているであろう年会費実質無料のゴールドカードで、個人賠償の保険金額が20万円だったのです。さきほどの9,520万円の事故に対して、賠償額の0.2%。しかも旅行傷害保険と違って自動では付いておらず、自分で選んで申し込む必要がありました。
もうひとつ効いたのが、カードを解約すると付帯保険も一緒に消えるという点です。これは私が自動車保険でやったことと、まったく同じ構造でした。
個人賠償は火災保険・自動車保険・クレジットカード・共済と、どこにでもぶら下がれる便利な特約です。でも便利さの裏返しで、保険がぶら下がっている「本体」を乗り換えたり解約したりした瞬間に、気づかないまま消える。
だから私は、住んでいるかぎり必ず契約している火災保険——我が家でいちばん解約する予定のない「本体」——に付けることにしました。
カードのランクごとにいくら付いているのか、どこに付けるのがいちばん消えにくいのかは、クレジットカードの個人賠償責任保険はいくら?ゴールドでも20万円でしたで実際の一覧を出して比べています。
金額より先に見るべきだったもの
入り直すプランを選ぶ段になって、私は「限度額より、示談交渉サービスが付いているかのほうが大事だ」と考えていました。
自転車事故には自賠責保険がありません。示談代行がないと、加害者側の親である自分が、被害者やそのご家族と直接、金額の交渉をすることになります。何千万円という話を、素人が、相手の人生を壊した立場で。金額が3億あっても、この交渉を自分でやるのは現実的ではありません。
ところが契約前に重要事項等説明書を最後まで読んで、この2つが切り離せないものだと分かりました。示談交渉サービスには「賠償責任の額が保険金額を明らかに超える場合は使えない」という条項があったのです。つまり1億を明らかに超える事故では、示談代行がいちばん必要なその場面で外れる。
限度額を上げることは、そのまま示談代行を残すことでもありました。私は最初、この2つをまったく別の項目として見ていました。
この条項の全文と、個人賠償で出る例・出ない例は個人賠償責任保険はどこまで出る?約款の免責条項を全部書き出しましたに書きました。
穴を塞ぐのに、月190円かかりました
いちばん安いプランを解約して、個人賠償が付いたプランに入り直しました。その日のうちに、ネットで解約して、ネットで加入しています。契約内容はこれです。
| 補償 | 保険金額 |
|---|---|
| 家財 | 700万円(100万〜700万から選択・免責金額なし) |
| 借家人賠償責任(大家さんへの賠償) | 1,000万円 |
| 修理費用特約 | 50万円(自己負担3,000円) |
| 個人賠償責任 | 1億円(免責金額なし・示談交渉サービス付) |
| 保険料 | 月630円 |
個人賠償1億円の上乗せぶんは、月190円でした。年に2,280円です。1年以上、この金額をケチって家族全員を無防備にしていたことになります。
ついでに約款を最後まで読んで、賃貸の火災保険が思っていたより守ってくれないことも分かりました。外れているのは水災・破損汚損(不測かつ突発的な事故)・地震の3つで、しかも地震が原因の火災も出ません。経年劣化の雨漏りも対象外でした。
何が出て何が出ないかは、賃貸の火災保険はどこまで出る?約款を全部読んで出る・出ないを並べましたにケース別でまとめています。
それでも家財は最大の700万円を選びました。破損汚損が外れたということは、残った補償が全部「まとめて複数台やられる」タイプに偏ったということだからです。落雷で家電が全滅する、火事で全損する。そちらは自力で復旧できません。しかも家財100万円と700万円の保険料差は、月60円でした。
もうひとつ、家財を削らなかった理由があります。失火責任法があるため、隣の部屋から火が出てうちが全焼しても、火元に重過失がなければ賠償を請求できません。他人の火事で家財を全部失っても、復旧原資は自分の家財保険だけです。
✅ 対策
個人賠償はいちばん解約する予定のない契約に付ける。我が家は賃貸に住むかぎり必ず契約している火災保険を選びました。車は手放すかもしれず、カードは来年には乗り換えているかもしれません。でも火災保険だけは、賃貸借契約の条件になっていて自分の都合では解約できないからです。
子供がいる家庭なら、生命保険より先だと思う
ここまで調べて、自分の中の優先順位がはっきりしました。
私が保険を測るときの基準は、20年前からひとつだけです。起きたときの損失を、公的制度と貯金で吸収できるかどうか。生命保険も医療保険も学資保険も、この基準で「要らない」と判断しました。遺族年金があり、高額療養費があり、傷病手当金がある。足りない分は貯金で埋まる範囲だと考えたからです。
同じ基準を個人賠償に当てると、答えが真逆になりました。
- 起きる確率は低い。でも起きたら9,000万円級
- 公的制度は一切助けてくれない。自転車事故には自賠責すらない
- 貯金では絶対に埋まらない
- それでいて月190円
条件が揃いすぎています。しかも子供が自転車に乗り、走り回り、店で物に触る年齢なら、加害者になる確率は大人より高い。神戸地裁の9,520万円の事例は小学5年生でした。
だから私は、子供がいる家庭では生命保険や医療保険より、個人賠償のほうが先だと思っています。掛け金の桁が2つ違ううえに、公的制度の守備範囲がまったく重なっていないからです。
そして皮肉なことに、私のように「保険はほとんど要らない」と考えている家庭ほど、ここに穴が開きやすい。減らすことばかり考えていると、残すべきものまで一緒に落としてしまうからです。実際、私は1年間それに気づきませんでした。
生命保険を解約するかどうかで何週間も悩む前に、まず個人賠償が家に1本あるかを確認する。そのほうが、はるかに割に合います。
⚠️ この保険でも守れない場面があります
- アルバイトの配達業務中の事故(職務の遂行に直接起因する事故は免責。行き帰りの通勤は対象)
- 借りている部屋の壁に穴を開けた場合(家財・個人賠償・借家人賠償のどれからも出ない)
- 自分や同居家族のケガ(個人賠償は相手に払うための保険)
- 自分や同居家族の持ち物を壊した場合
✔️ 火災保険に個人賠償を付けるのが向いている人
- 賃貸に住んでいて、火災保険の加入が賃貸借契約の条件になっている
- 子供が自転車に乗る・走り回る年齢で、加害者になる可能性がある
- 車を手放す可能性がある、またはクレジットカードを整理する習慣がある
- 「保険はできるだけ持たない」方針で、残す1本を選びたい
今日、5分でできること
ここまで読んで「うちはどうだろう」と思われた方に、私がやったことをそのまま渡します。お金もアカウントも要りません。
保険証券を開いて、「個人賠償」という4文字を探すだけです。探す場所は3か所。
- 火災保険(賃貸なら管理会社経由の契約書、持ち家なら証券)
- 自動車保険(証券の「その他の補償・特約」欄。ここに並んでいる特約名を1つずつ見る)
- クレジットカード(付帯保険のページ。上限額も一緒に見る)
どれか1つにあれば、多くの場合は本人・配偶者・同居の親族・別居の未婚の子まで家族全員がカバーされています。1つもなければ、1年前の我が家と同じ状態です。
もうひとつ、金額と関係なく効くことがあります。各部屋・押し入れ・クローゼットをスマホで動画撮影して、クラウドに置いておく。家財の保険金請求には品名・数量・購入時期を書いた明細書が要るのですが、全焼したら現物がないので記憶で書くことになります。5人ぶんは絶対に思い出せません。10分で終わって、コストはゼロです。
まだ残している宿題
正直に書くと、今回で全部が片づいたわけではありません。
- 自転車保険は未加入。限度額3億円クラスに上積みして、示談交渉サービスを重大事故でも残すため。あと、火災保険付帯の個人賠償には子供自身のケガの補償が1円も付きません。自転車通勤で確率が高いのは、むしろ自損での骨折のほうです
- 自動車保険は12月更新。個人賠償を戻すかどうかを、今度は価格差だけでなく前提込みで判断します
- アルバイト先への通勤届。通勤中のケガは労災の通勤災害が使えますが、経路と方法を届け出ていることが前提になります
去年、自動車保険の個人賠償を外したときに私が見ていたのは、価格差だけでした。今回いろいろ読んで、ひとつ知らなかった事実があります。個人賠償責任特約の保険金だけを使った場合は「ノーカウント事故」に分類され、翌年の等級は下がりません。それどころか通常どおり1等級上がり、事故有係数適用期間も付きません。
つまりこの特約は、使うことを一切ためらわなくていい補償です。車両保険や対物とは性格がまったく違います。これを知っていたら、去年の判断は変わっていたかもしれません。
よくある質問
Q. アルバイト中の事故も補償されますか?
されません。約款に「被保険者の職務の遂行に直接起因する損害賠償責任」は免責と明記されています。ただし「職務の遂行に直接起因する」なので、行き帰り(通勤)は対象です。うちの子は通勤だけなので問題ありませんが、もしお子さんのアルバイトが配達系(フードデリバリー・新聞・ピザなど)で自転車を使うなら、事故の瞬間にこの補償は効きません。バイトの中身を先に確認してください。
Q. 保険料はいつ払う設定にしていますか?
月払いのクレジットカード決済です。今回、この「月払い・ネット完結」であることが決め手のひとつになりました。解約したその日のうちに、次の契約の補償が始められたからです。年払いだと、この乗り換えは満期まで待つか、掛け捨てを覚悟するかになります。
まとめ:線引きは、決めたあとに中身の確認がいる
📝 まとめ
- 個人賠償は火災保険・自動車保険・カードのどこにでも付けられるが、本体を乗り換えた瞬間に気づかず消える
- 自転車事故の判決は最高9,520万円。弁護士費用と遅延損害金を足すと1億円では余裕がない
- 子供がいる家庭では、公的制度が一切助けてくれないぶん生命保険や医療保険より優先度が高い
- 我が家が穴を塞ぐのにかかったのは月190円だった
保険を減らす判断と同じくらい、残した保険の中身を見る作業が要ります。
私は保険を減らすことにずっと自信を持っていました。生命保険も医療保険も学資保険も要らない、と20年間言い続けてきました。その判断自体は、いまも変えるつもりがありません。
ただ今回はっきりしたのは、減らす判断と同じくらい、残した保険の中身を見る作業が要るということでした。「自動車と火災には入っている」で安心していた1年間、我が家の個人賠償はゼロでした。埋めるのにかかったのは月190円です。
子供が自転車で出かけていく後ろ姿を見て、たまたま思いついたから気づけました。気づかないまま事故が起きていたら、と考えると、いまでも少し落ち着きません。
証券を1枚開いて、4文字を探すだけです。今日のうちにやってみてください。
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※この記事は私個人の契約内容と、実際に読んだ重要事項等説明書にもとづく記録です。補償の範囲や約款の文言は保険会社・商品・改定時期によって異なります。ご自身の契約については、必ずお手元の約款と保険会社にご確認ください。私は保険の専門家ではありません。



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