投資の勉強というと、チャートの読み方や銘柄分析を思い浮かべる方が多いと思います。でも、私の4年間の投資を実際に支えてきたのは、投資のテクニック本ではなく2冊の「投資の本ではない本」でした。『ブラックスワン』(ナシーム・タレブ)と『データの見えざる手』(矢野和男)です。
横浜市在住・50歳営業職・子供3人を1馬力で養う会社員です。2021年からレバナスと3倍レバ投信を積み立て、2022年に資産が6割溶けても売らず、現在は4口座合算で評価額約6,200万円になりました。この記事は銘柄の話ではなく、その土台になった「考え方の設計図」を2冊から辿る話です。
📋 この記事でわかること
- 『ブラックスワン』から作った「予測しない・退場しない・上振れを取る」の3原則
- 『データの見えざる手』から作った「意志力に頼らない自動化」の仕組み
- 2冊の教えが2022年の暴落で実際にどう機能したか
- 本の教えを自分の投資ルールに落とすときの注意点
『ブラックスワン』:予測を捨てたら、レバレッジが怖くなくなった
『ブラックスワン』の核心は、「世界を動かすのは、誰も予測できなかった稀な出来事(黒い白鳥)であり、人間は事後にだけそれを説明できた気になる」という話です。コロナ禍の引きこもり期間にこの本を読んで、私の投資観は固まりました。
普通、この本は「だから慎重に」と読まれがちです。私は逆に読みました。予測できないなら、①暴落を予測して避けようとするのは無駄②ならば暴落が来ても退場しない設計を先に作る③その上で、予測できない上振れ(良い方のブラックスワン)を最大限拾える形にする。収入が限られた会社員が上振れの尾を拾うなら、レバレッジしかない——リスクを避けるためではなく、リスクの置き場所を決めるためにこの本を使ったわけです。
💬 実際どうなのか
この読み方が試されたのが2022年でした。レバナスが6割下落したとき、私の中でそれは「想定外の悲劇」ではなく「来ると決めていたものが来た」でした。予測はしない、でも想定はしておく。この区別こそ、あの本から持ち帰った一番の資産だと思います。ちなみに翌2023年、周囲が投資から離れていく中で旧NISA枠120万円を3倍レバに入れられたのも、「暴落後も淡々と枠を使う」と事前に決めてあったからです。
『データの見えざる手』:意志力を信じるのをやめた
もう1冊は毛色が違います。『データの見えざる手』は、ウェアラブルセンサーで人間の行動を計測し続けた研究者による本で、人間の行動は本人が思っているよりずっと機械的・法則的だと示す内容です。投資の本ではまったくありません。
でも私はここから、投資で一番大事なルールを作りました。「自分の意志力を、投資の意思決定に使わない」です。人間の行動が法則的なら、暴落時の私も法則的に狼狽するはず。ならば狼狽する場面自体を設計から消せばいい。積立は全自動、金額変更は年1回だけ、下落時にやることは「何もしない」と事前に決める。ガチホは精神力ではなく、意思決定の機会を減らす設計の産物——この発想は完全にこの本のものです。
✅ 対策
具体的に変えた行動は3つ。①積立設定を全自動にして、買付日に自分が関与しない②相場情報を見る時間を意図的に減らす(見るほど行動したくなるのが人間の法則だから)③判断が必要な作業(増額など)は、相場が穏やかな時期の年1回に固定する。どれも「強い意志」ではなく「意志を使わない仕組み」です。
2冊を組み合わせると何ができるか
整理すると、『ブラックスワン』が戦略(何に賭け、何を想定するか)を決め、『データの見えざる手』が実行(どう続けるか)を支えている構図です。攻めの中身はテック集中のレバレッジ投信とFANG+。それを支える実行系は、全自動の積立と「売らない」ルール。戦略だけでは暴落で折れ、実行系だけでは何に賭けるか定まらない。両輪だった、と4年経った今は思います。
親や先生や上司から刷り込まれた「貯金が正義」「借金も投資も怖いもの」という常識を、一度ゼロから疑って組み直す。私にとって読書はそのための道具でした。幸い、どちらも投資本ではないので、相場観の古さとは無縁です。10年後に読んでも多分そのまま使えます。
⚠️ 以下に当てはまる方は慎重に検討してください
- 本の内容を「レバレッジ投資のお墨付き」として読もうとしている(どちらの本もそんなことは書いていません)
- 私の解釈をそのまま自分のルールにしようとしている(前提となる家計・耐性が違います)
- 「退場しない設計」を作る前に、攻めの商品だけ真似しようとしている
✔️ 以下の方に向いています
- 銘柄選びより先に、ブレない投資の「考え方の軸」を作りたい
- 暴落のたびに狼狽してしまう自分を、意志力以外の方法で変えたい
- 世間の常識を疑って、自分の頭で家計と投資を設計し直したい
本をルールに変える手順
最後に、読んで終わりにしないための私のやり方を。①読み終えたら「自分の行動をどう変えるか」を1行で書く(例:積立を全自動にする)②その1行を実際の設定変更まで落とす③半年後、その行動が続いているかだけ確認する。書けなければ、それはまだ自分の道具になっていません。名著を何冊読んだかより、行動が1つ変わったかどうか。投資に効く読書は、それだけだと思います。
2冊の読みどころ(投資家目線のガイド)
『ブラックスワン』は上下巻で分量がありますが、投資への応用という点での核は「予測の限界」と「非対称性」の議論です。細部の統計談義で挫折しそうになったら、「要は、当てにいくな、備えろ、上振れは開いておけ」という一本の主張に戻って読むと迷子になりません。タレブの毒舌は好みが分かれますが、毒舌部分は読み飛ばしても主張は取れます。
『データの見えざる手』で投資に効くのは、人間の活動量に物理法則のような規則性があるという前半の議論と、「運の良さ」さえ行動パターンで説明しようとする後半です。読みながら「自分の投資行動のうち、意志だと思っているものはどこまで自動なのか」と自問すると、そのまま自分の運用ルールの点検になります。私はこの本を読んで以来、「今日は買い増したい気分」を一切信用しなくなりました。気分もまた、法則的に発生しているだけだからです。
よくある質問
Q. 投資の入門書を差し置いて、この2冊から読むべき?
A. いいえ。NISAや投資信託の仕組みといった基礎は、入門書や公的機関の資料で先に押さえるべきです。この2冊は「何を買うか」ではなく「どう構えるか」の本なので、基礎知識と少額の実践経験があってから読むほうが、はるかに刺さります。
Q. 他に影響を受けた本は?
A. 核はこの2冊ですが、読書より効いたのは「少額で実際に下落を経験すること」でした。本は設計図を与えてくれますが、自分の恐怖の実物大は、体験でしか測れません。1冊読むごとに少額で1つ実行する、の往復をお勧めします。
Q. 2冊の教えで一番難しかったのは?
A. 「何もしない」を続けることです。知識としては簡単ですが、暴落の渦中で実行するのは別次元でした。だからこそ、意志力ではなく仕組み(自動積立・見ない習慣・事前ルール)に落とす。2冊目の価値は、1冊目の教えを「実行可能にする」ところにあります。
「本で投資が変わる」を疑っている方へ
正直に書くと、私も以前は「読書で投資が上手くなるなら苦労しない」と思っていました。実際、本を読んだだけでは何も変わりません。私の場合も、2冊が効いたと言えるのは、読んだ内容を「積立の自動設定」「売らないルールの明文化」「相場情報を見る時間の削減」という具体的な設定変更にまで落としたからです。変わったのは知識ではなく、スマホの中の設定と生活の習慣でした。
もうひとつ、読書が効いた場面として「他人の意見への耐性」があります。レバレッジ投資をしていると、「やめとけ」「危険だ」という声と「もっと攻めろ」という声の両方が届きます。自分の設計に根拠があると、どちらの声にも動じずに済む。2022年の暴落中、SNSの「レバナスは詐欺」の大合唱の中で売らずにいられたのは、値動きへの耐性だけでなく、「自分がなぜこの形にしたか」を本に遡って説明できたことが大きかったと思います。
最後に予防線をひとつ。本の解釈は人それぞれで、同じ2冊から「レバレッジなんてとんでもない」という結論を導く人もいるはずです。それで構わないと思います。大事なのは著者の結論を借りることではなく、自分の家計と性格に合う設計を、自分の言葉で説明できるようになることです。私にとってその道具がこの2冊だった、という話に過ぎません。
この記事で書いた内容は、当ブログのレバナス実録や二本立て戦略の記事の「思想編」にあたります。数字の記録と設計図はセットで読んでいただくと、なぜ私がこの形に落ち着いたのかが立体的に見えるはずです。
読む順番を聞かれたら、私は『データの見えざる手』を先に勧めています。分量が手頃で、投資以外の仕事や生活習慣にもすぐ応用が効くからです。行動を仕組みで変える感覚をつかんでから『ブラックスワン』で戦略の軸を作る。この順番のほうが挫折しにくいはずです。
📝 まとめ
- 『ブラックスワン』=予測しない・退場しない・上振れの尾を取る、という戦略の軸
- 『データの見えざる手』=意志力に頼らず、意思決定の機会を減らす実行の軸
- 2022年の6割下落を「想定内」にできたのは、この2冊の組み合わせのおかげ
- 読書は行動が1つ変わってはじめて投資に効く。1行のルール化まで落とすこと
チャートより先に、自分の頭の中の設計図を作る。遠回りに見えて、それが一番の暴落対策でした。
※本記事は筆者個人の読書体験と投資記録に基づくものであり、特定の金融商品や投資手法の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。



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