前回「FANG+は分散が足りないのか」という記事を書いたとき、私は自分で3つの穴を挙げました。①法人は10社とも米国籍だからカントリーリスクは分散されない ②設備投資112兆円はほぼ全部AI向けで、賭けている対象は1つ ③経営判断のミスは分散されない——の3つです。
書いたあとで、自分の中に引っかかりが残りました。①と②は、本当に「穴」なのか。
横浜市在住、50歳の営業職。子供3人を1馬力で養う会社員です。2021年からレバナスを積み立て、2024年からは新NISAでFANG+を買っています。今回は自分で挙げた穴に、自分で反論します。調べ直したら、思っていたより手強い反論になりました。
📋 この記事でわかること
- ★反論①:本社が米国でも、事業は世界中にある。「本社の住所」と「稼ぐ場所」は別
- ★そして決定打:オルカンも63.0%はアメリカでした(公式月報の実数)
- ★反論②:AIはもうセクターではなく、全産業のインフラになりつつある
- オルカンの業種構成も、情報技術31.0%+コミュニケーション7.8%=約39%がテック系
- 「テックを避ける」ことが、そもそも構造的にできなくなっている話
- それでも残る本当のリスク(ドットコムの教訓と、修正が効くまでの最大3か月)
反論①:本社が米国でも、事業は世界中にあります
前回はこう書きました。「世界中に工場やデータセンターがあっても、本社と納税地と上場市場は全部アメリカ。米国の税制が変わる、独占禁止法で分割される、輸出規制がかかる——こうしたときは10社まとめて影響を受ける」と。
事実としては正しいのですが、「だから1か国に集中している」と言い切るのは乱暴だったと思い直しました。
この10社は登記上こそ米国法人ですが、実態は各国に現地法人を持ち、各国で人を雇い、各国の通貨で売上を立てている多国籍企業です。前回並べた米国外売上比率をもう一度見てください。
| 企業 | 米国外の売上比率 |
|---|---|
| Broadcom | 約72% |
| Meta | 約61% |
| Apple | 約57% |
| Netflix | 約56% |
| Alphabet | 約52% |
| Microsoft | 48.7% |
売上の半分以上が米国の外で立っている会社を「アメリカの会社」の一言で括るのは、実態から離れています。トヨタを「日本市場の会社」と呼ぶ人がいないのと同じです。
「米国が沈んだら」と言うとき、多くの人が想像しているのは米国経済の停滞だと思います。でも米国経済が停滞しても、ヨーロッパやアジアでiPhoneが売れなくなるわけではありません。Microsoftのクラウドをドイツの製造業が使うのをやめるわけでもない。事業の足が各国に生えている以上、米国の景気だけでは倒れません。
💬 実際どうなのか
規制についても、実は「まとめて全滅」しにくい構造があります。規制は各国がバラバラに、別々のタイミングで、別々の内容で来るからです。EUのデジタル規制、米国の反トラスト、各国の税制——同時に全部が最悪の方向に振れる確率は、思ったほど高くありません。むしろ多国籍であることが、規制リスクを分散させている面があります。
★決定打:オルカンも63.0%はアメリカでした
そして、ここが今回いちばん書きたかったところです。
「FANG+は米国に集中しているから、オルカンで国を分散すべきだ」——この主張を検証するために、オルカンの公式月次レポートで国別の構成比を確認しました。結果がこれです。
| 順位 | 国・地域 | 比率 |
|---|---|---|
| 1 | アメリカ | 63.0% |
| 2 | 日本 | 5.1% |
| 3 | 台湾 | 3.1% |
| 4 | イギリス | 3.0% |
| 5 | カナダ | 2.9% |
| 6 | 韓国 | 2.8% |
| 7 | フランス | 2.1% |
| 8 | スイス | 2.0% |
| 9 | ドイツ | 1.8% |
| 10 | オーストラリア | 1.4% |
全世界に分散されているはずのオルカンも、3分の2近くがアメリカです。2位の日本が5.1%、3位の台湾が3.1%。1位と2位で58ポイントも差があります。
つまり「オルカンにすれば米国のカントリーリスクを避けられる」は成立しません。米国が本当に沈むような事態になれば、オルカンも6割強を持っていかれます。差は「100%か63%か」であって、「集中しているか、していないか」ではない。程度の問題です。
✅ 対策
本気で米国のカントリーリスクを薄めたいなら、オルカンでは足りません。先進国株(除く米国)や新興国株のファンドを、意図的に別枠で買う必要があります。「オルカンを持っているから国は分散できている」と思っているなら、一度ご自身の月次レポートで国別比率を見てみてください。想像より米国が多いはずです。
反論②:AIはもうセクターではなく、全産業のインフラです
前回はこう書きました。「4社の設備投資112兆円は、ほぼ全部がAIインフラ向け。地理的には分散していても、賭けている対象は1つ。これは分散ではなく、同じ賭けを10回している状態に近い」と。
これも、前提を疑い直しました。AIは、本当に「1つのセクター」なのか。
電気に投資するのは「電力セクターへの集中投資」か
たとえば1900年代の初め、電力インフラに投資することを「電力セクターへの一点賭け」と呼ぶのは正しかったでしょうか。電気は特定の業種のものではなく、あらゆる産業が乗る土台になりました。鉄道も、電話も、インターネットも同じ道をたどっています。
2000年に「インターネット関連に投資するのは分散じゃない」と言った人は、方向としては間違っていました。今、インターネットを使わない産業を探すほうが難しい。あれは業種ではなく、全産業の下に敷かれた土台になりました。
AIも同じ道を進んでいるのではないか——というのが私の見方です。112兆円で建てられているデータセンターを使うのは、テック企業だけではありません。外観検査を自動化する製造業、診断を支援する医療、不正検知と与信をやる金融、在庫と接客を回す小売。クラウドの請求書を払っているのは、全産業です。
だとすれば「AIに賭けている」は「テックというセクターに賭けている」ではなく、「全産業が使う土台に賭けている」と読むほうが実態に近い。少なくとも、そう読む余地はあると思っています。
そもそも「テックを避ける」ことが、もうできません
これも月次レポートを見て気づいたことです。オルカンの業種構成を見ると、情報技術が31.0%、コミュニケーション・サービスが7.8%。合わせて約39%がテック系です。
| 順位 | 業種 | 比率 |
|---|---|---|
| 1 | 情報技術 | 31.0% |
| 2 | 金融 | 16.0% |
| 3 | 資本財・サービス | 10.8% |
| 4 | 一般消費財・サービス | 8.6% |
| 5 | ヘルスケア | 8.3% |
| 6 | コミュニケーション・サービス | 7.8% |
「全世界に分散する」ことを選んでも、気づけば4割近くがテックに寄っています。これは運用会社が偏らせているのではなく、時価総額で並べると自然にそうなるからです。
つまり「テックに偏りたくない」という願望は、もう市場の構造と噛み合っていません。本気で避けたいなら、均等加重やバリュー系のファンドを意図的に選ぶしかない。オルカンを買うことは、テック回避の手段にはなりません。
それでも残る論点と、自分の訂正が3つ
ここまで自分の反論を書いてきましたが、都合のいいところだけ拾っても意味がないので、残る論点も書きます。1つは前回の自分の書き方が不正確だったので、訂正です。
① ドットコムの教訓:テーマが正しくても、銘柄は死ぬ
これがいちばん重い反証です。「インターネットは全産業のインフラになる」という2000年の読みは、完全に正しかった。それでも、当時その予測に賭けて買われた企業の多くは消えました。
つまり「テーマが当たること」と「その銘柄が生き残ること」は別問題です。AIが全産業のインフラになるという読みが正しかったとしても、今の10社がその果実を取るとは限りません。インフラを敷いた会社ではなく、その上で商売をした会社が勝つ、という展開も普通に起こります。
💬 実際どうなのか
ただしFANG+の場合、失速した銘柄は指数のルールで実際に外されています。Snowflakeは約1年9か月、CrowdStrikeは約1年半、ServiceNowは約1年3か月で入れ替わりました。
つまり「銘柄が死んでも、指数は死なない」設計にはなっている。ドットコムのときに個別株を持っていた人と、指数を持っていた人では、結果がまったく違いました。ここは思っていたより耐性があります。
② 「全産業のインフラ」は、まだ完了していない
私は「AIは全産業のインフラになりつつある」と書きましたが、「なった」とは書いていません。現在進行形です。
実際、日本国内のAI活用率は、常用雇用者100人以上の企業でも全産業平均で2割弱という調査があります。112兆円という投資は「これから全産業が使うはずだ」という前提の上に乗っているわけで、その前提が想定より遅れれば、投資は先に膨らんで回収が後ろにずれます。
電気もインターネットも、最終的には全産業のインフラになりましたが、そこに至るまでに何度も過剰投資と反動を繰り返しています。方向が正しいことと、途中で大きく凹まないことは別です。
③ 穴③は「自動修正がない」ではなく「効き方が違う」でした
前回、私は「10銘柄のFANG+には自動修正が効かない」と書きました。ここは書き方を訂正します。
さきほど挙げたSnowflakeやCrowdStrikeが外されたこと、あれ自体が自動修正が働いた結果です。指数のルールが、失速した銘柄を機械的に排除している。「修正機能がない」というのは事実に反していました。
正確に言うと、FANG+には修正が二層で入っています。しかも上下の層で向きが逆です。
| 層 | FANG+の動き | 向き |
|---|---|---|
| 銘柄の入れ替え(年4回) | 失速した銘柄を外し、勢いのある銘柄を採用 | 順張り |
| ウェイトの調整(四半期ごと) | 下がった銘柄を10%まで買い戻す | 逆張り |
これに対してオルカンは一層だけです。時価総額加重なので、下がった銘柄の比率が毎日なめらかに下がっていく。順張り一本で、判断のタイミングという概念がありません。
| オルカン | FANG+ | |
|---|---|---|
| 修正の方式 | 比率が連続的に下がる | 四半期ごとに入れ替える |
| 速さ | 毎日・遅れなし | 最大3か月の遅れ |
| 強さ | 弱い(小さくなるだけで消えない) | 強い(除外される) |
| 下落中の動き | 放っておかれる | 10%まで買い戻される |
こうして並べると、どちらが優れているとは言えません。FANG+の除外は強力ですが遅い。オルカンの減衰は速いですが、ダメな会社もずっと持ち続けます。
⚠️ 本当に痛いのは、外されるまでの期間です
問題は「修正されるかどうか」ではなく、修正されるまでの間に何が起きるかでした。
失速した銘柄は、外されるまでの1年半ほどのあいだ、四半期ごとに10%まで買い戻され続けます。下がっている銘柄を機械的にナンピンし続けるということです。しかも外すときは十分に下がったあと。結果として「高く買って、安く売る」形になりやすい。
私が前回「自動修正が効かない」と感じたのは、正確にはこのタイムラグとナンピンのコストのことでした。
結局、どう整理したか
2つの反論を書いて、私の中ではこう整理がつきました。
| 前回書いた「穴」 | 今回の結論 |
|---|---|
| ①米国籍だからカントリーリスクは分散されない | ほぼ反論できた。事業は世界中にあり、そもそもオルカンも63%はアメリカ |
| ②AIという1つの対象に賭けている | 半分反論できた。AIはセクターではなく全産業のインフラ。ただし「まだ進行中」 |
| ③経営判断のミスは分散されない | 言い方を訂正。修正機能はある(実際にSnowflake等は除外された)。問題は外れるまでのタイムラグとナンピン |
よく言われる「FANG+は米国とテックに集中しすぎ」という批判は、言葉ほど強くありません。オルカンを買っても63%はアメリカで、4割近くはテックだからです。違いは程度であって、種類ではない。
残る本当の違いは「自動修正の効き方」——ここに集約されると思っています。どちらにも修正機能はある。オルカンは速いが弱く、FANG+は強いが遅い。分散の議論としては、国でも業種でもなく、ここだけが本質でした。
✔️ だから私はこうしています
- FANG+は金融資産の8%程度まで。修正が効くまでに最大3か月のタイムラグがあるぶん、量で調整する
- 「国の分散」を目的にオルカンを足すことはしない(63%はアメリカなので目的を果たさない)
- 本気で国を分散したいときは、先進国株(除く米国)や新興国株を別枠で買う
- 為替は当てにいかず、ヘッジあり・なしを両建てにしておく
なお、この2本ともNISA枠と特定口座に分けて持っています。同じ商品でも「どこの証券会社で持つか」で戻ってくる金額が変わるので、置き場所だけは早めに決めておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. オルカンの米国比率63%は、これからも変わりませんか?
A. 変わります。時価総額加重なので、米国以外の市場が伸びれば米国比率は自然に下がります。実際、過去には6割を下回っていた時期もあります。ただし「自分で下げる」ことはできません。比率を決めているのは市場であって、あなたでも運用会社でもないからです。意図的に下げたいなら別ファンドを足すしかありません。
Q. 「AIは全産業のインフラ」なら、FANG+を買えば安心ですか?
A. いいえ。この記事でいちばん誤解されたくない点です。テーマが正しくても銘柄が生き残るとは限らないのが、ドットコムの教訓でした。インフラを敷く側が儲かるのか、その上で商売する側が儲かるのかも、まだ決着していません。「方向が正しい」と「この10社が勝つ」の間には、大きな距離があります。
Q. じゃあオルカンは意味がないということですか?
A. まったく違います。オルカンの本当の価値は「国の分散」ではなく「修正の速さ」だと思っています。判断を誤った会社の比率が、翌日から下がっていく。FANG+にも修正はありますが、外れるまで最大3か月かかり、その間はむしろ買い増されます。買う理由を「国の分散」だと思っていると、価値を取り違えます。
Q. 自分のファンドの国別・業種別比率はどこで見られますか?
A. 運用会社が毎月出している月次レポートに載っています。この記事の数字も、すべてそこから取りました。証券会社のファンド詳細ページからPDFで開けます。年に1〜2回でいいので、国別と業種別の上位10を見ておくと、自分が何を持っているのかがはっきりします。
まとめ
📝 まとめ
- 前回、自分で挙げた3つの穴のうち、①と②に自分で反論した
- ★反論①:本社が米国でも事業は世界中。Broadcomは約72%、Metaは約61%、Appleは約57%が米国外の売上
- 米国経済が停滞しても、欧州やアジアでiPhoneが売れなくなるわけではない
- 規制は各国がバラバラに来るので、多国籍であることがむしろ規制リスクを分散させている面がある
- ★決定打:オルカンも63.0%はアメリカ(2026年6月30日基準)。2位の日本は5.1%
- 「オルカンにすれば米国リスクを避けられる」は成立しない。違いは100%か63%かという程度の差
- ★反論②:AIはセクターではなく全産業のインフラになりつつある。電気やインターネットと同じ道
- 112兆円のデータセンターを使うのは、製造・医療・金融・小売——つまり全産業
- オルカンの業種構成も情報技術31.0%+コミュニケーション7.8%=約39%がテック系。テック回避はもう構造的にできない
- ⚠️ ドットコムの教訓:テーマが正しくても銘柄は死ぬ。ただしFANG+は入替で銘柄を外すので、「銘柄が死んでも指数は死なない」設計にはなっている
- ⚠️「全産業のインフラ」はまだ進行中。日本のAI活用率は100人以上の企業でも全産業平均で2割弱
- ★穴③は言い方を訂正。Snowflake等が除外されたこと自体が修正機能が働いた証拠。FANG+の修正は二層構造で、銘柄入替は順張り・ウェイト調整は逆張り
- ⚠️ 本当に痛いのは「外されるまでの最大3か月」。その間、下がった銘柄は10%まで買い戻され続ける=ナンピン
- 残る本当の違いは「自動修正の効き方」だけ。オルカンは速いが弱く、FANG+は強いが遅い
- だから私はFANG+を金融資産の8%程度に抑えている
「集中しすぎ」と言われたら、まず自分の持っているファンドの国別・業種別の上位10を見てください。想像より偏っているはずです。
自分で書いた穴に自分で反論するのは、正直あまり気持ちのいい作業ではありませんでした。それでもやってよかったのは、「分散」という言葉を無条件に善だと思っていたことに気づけたからです。国を分けることと、リスクが下がることは、同じではありませんでした。
※本記事は筆者個人の運用体験と、運用会社および各社が公表している資料に基づく記録であり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。構成比率・売上の地域別内訳・設備投資額は記事内に記載した時点のものであり、今後変更されます。最新の情報は必ず各運用会社の月次レポートおよび各社のIR資料でご確認ください。最終的な投資判断はご自身の責任と判断で行ってください。



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