証券会社の管理画面で、積立設定のページを開きました。「解除」を押せば終わります。数秒の作業です。
押さずに、閉じました。
理屈では、止めたほうがいい状況でした。手元の現金は細くなっていて、これ以上入れる意味も薄い。それでも押せませんでした。いま思い出しても、あのとき何が邪魔をしていたのか、うまく説明できません。
📋 この記事でわかること
- 投資の出口戦略が難しい本当の理由——相場の話ではなく、習慣の話でした
- 順番を守って始めたのに、続けているうちに崩れた話(苦しさが資産から手元へ引っ越しました)
- 「ステージに応じて積立額を変えればいい」——正しいのに、私にはできませんでした
- 私が終わらせられなかった3つの習慣と、それを終わらせた3つの「外からのきっかけ」
- やめる代わりに私が逃げ込んだ妥協案の話(あまり褒められたものではありません)
- 次の目標を無理やり作った結果どうなったか(太りました)
- これから始める人に、1行だけ書いておいてほしいこと
始め方は、あんなに考えたのに
まとまった現金ができたとき、一括で入れるか、分けて積み立てるか。この議論は本当によく見かけます。私も相当読みました。
私が出した結論は「半分は一括、半分は積立」でした。どちらが正しいか決着がつかないなら両方やればいい、という考え方です。この判断自体は、いまでも悪くなかったと思っています。
順番も、そこそこ気をつけていたつもりです。生活防衛資金は別に確保したうえで、余った分だけを半分ずつに割りました。始めるときの線引きは、できていたと思っています。
ただ、いま振り返ると決めていたのは入口だけでした。いつまで積むのか。どこまで来たら入れるのをやめるのか。何も決めていませんでした。
苦しさが、途中で引っ越しました
2022年は、一括で入れた半分が6割ほど溶けました。そのあいだも、残りの半分は積立で入れ続けています。このときの苦しさは、資産が減っていくことでした。
2023年の途中から相場が戻ってきて、資産のほうは落ち着きました。ところが、そこで終わりませんでした。
💬 苦しさの引っ越し先
今度は、貯金のほうが目減りしてきました。積立を止めないまま時間が経ったので、当たり前といえば当たり前です。
資産が減る苦しさと、手元が減る苦しさは、別物でした。そして後者のほうが、私にはこたえました。始めるときに引いた線が、続けているうちに崩れていたわけです。線引きは1回やって終わりではなかった——これに気づくのに、1年以上かかりました。
終わらせられなかった、3つの習慣
数えてみたら、私には終われなかった習慣が3つありました。並べてみて、自分でも少し驚きました。
| 終われなかった習慣 | 実際に終わらせた(終わらせる)きっかけ | 自分の意思か |
|---|---|---|
| まとまった現金の分割投資(残り半分) | 新NISAが始まったこと(2024年) | いいえ |
| クレジットカード積立のポイント取り | 還元率の改悪(2026年) | いいえ |
| 新NISAの積立 | 子供の大学入学(これから) | いいえ |
3つとも、自分で決めて終わらせたものが1つもありません。全部、外から来た出来事に助けてもらっています。
2024年に分割投資を終わらせられたのも、意志が強かったからではありません。新NISAという新しい制度が始まったので、「今年からは新NISAだけにしよう」と、無理やり区切りを作っただけです。区切りが外から降ってこなければ、たぶんまだ続けていました。
やめる代わりに、妥協案に逃げました
ここは、あまり褒められた話ではありません。
積立をやめようとしたとき、私の中にあったのは損得の計算ではなく罪悪感でした。積み立てるのは良いことだ、続けるのが正しい、やめるのは怠けだ——理屈ではないところで、そう思い込んでいました。
それで何をしたか。クレジットカードで積み立てて、ポイントを受け取って、すぐ売って現金に戻す、という方法に逃げました。形の上では積立を続けている。でも実質的にはお金は戻ってくる。「やめていない」という体裁を保ったまま、実質的にはやめる——という苦肉の策です。
💬 正直に言うと
ポイントが欲しかったのも本当です。スケベ心はありました。ただ、それだけならもっと早くやめられたはずなんです。数年も続いたのは、この方法が「積立をやめる」という決断を先送りにできる形をしていたからだと思っています。
そしてこの妥協案は、妥協案なりに手間がかかりました。毎月、何社ぶんも売って、出金して、口座に戻す。やめる決断を先送りにするために、毎月の作業を増やしていたわけです。いま書いていても、なかなかのものだと思います。
次の目標を、無理やり作りました
2024年の後半、もうひとつ気づいたことがありました。これ以上節約しても、意味がない。相場が戻ってきて、1日の値動きが積立額を軽く超えるようになると、100円安いものを探す時間の意味が分からなくなってきます。
そこで、次の目標を無理やり作りました。コーストFIRE(※定義は人によって違いますが、私は「入金をやめても運用だけで目標に届く状態」の意味で使っています)に挑戦することにして、「貯める」から「使えるようになる」へ、目標を差し替えたわけです。
ここでも、私は同じことをしています。やめられないので、上書きしようとした。
2024年:毎週ランチを習慣にしようとして、太りました
使う練習も、私は習慣で解こうとしました。毎週ランチに行く、というふうに枠を決めたんです。銀座や日本橋に出かけて、ランチとパフェを食べていました。
結果、太りました。使いすぎを止めたのは意志ではなく体重計です。情けない話ですが事実です。
2025年:回数を設計し直しました
翌年は組み立て直しました。ランチは毎週ではなく月に何回かに減らし、ヒルトンのカードを作ってホテルに泊まるようにしました。この年の宿泊は4回です。「使う」を習慣ではなく設計として扱うようにした年です。うまい使い方を模索していた、という感じでした。ただ正直に言うと、回数を先に決めたぶん、どこか義務感で予定を埋めていました。体験を増やそうとして、無理やり使っていた感覚です。窮屈だったのは、そこでした。
2026年:好きなときに、好きなタイミングで
今年になって、ようやく落ち着きました。ホテルも外食も、好きなときに好きなタイミングで行けています。それでいて投資も貯金も回っていて、手元の残高も確保できている。回数を決めなくてもよくなった、というのがいちばん近い感覚です。
この3年間、外食やホテルに実際いくら使ったのかは、「お金を使う練習」の家計簿3年分としてそのまま公開しています。
✅ 3年かけて分かったこと
習慣にしようとした年(2024)はやりすぎ、設計にした年(2025)は窮屈で、3年目にようやく「決めなくてもいい」状態になりました。
使うことにも、練習と上達があります。そして下手なままでいると、いざ資産を取り崩す番になったときに、初めての下手を本番でやることになります。
いま、3つ目の習慣を終わらせようとしています
残っているのが、新NISAの積立です。
子供の大学入学という予定があるので、そこで止めると決めました。相場が下がったから止めるのではありません。値動きとは関係のない、時期を選べない支払いが来るからです。この2つを混ぜないことだけは、20年やってきて唯一まともに守れたルールでした。
そう決めたうえで、正直に書きます。
⚠️ 本当に終わらせられるのか、自信がありません
積立設定を止めるのは、ボタンを1回押すだけの簡単な作業です。手間はゼロ。手数料もかかりません。それなのに、前に一度、押せずに画面を閉じています。
感情なのか何なのか分かりませんが、何かが邪魔をしてきます。3回とも外からのきっかけに助けられてきた人間が、今度こそ自分で押せるのか——正直、まだ分かりません。
ここまで書いておいて結論が出ていないのは申し訳ないのですが、出せていないのが現状です。止められたかどうかは、そのときにまた書きます。
なぜ、外からのきっかけだと終われるのか
3つとも外からのきっかけで終わっている、と書きました。自分でも不思議だったので、少し考えてみました。
思い当たったのは、言い訳が要るかどうかです。
自分の判断で止めると、「怠けたのではないか」「あと1年続けていたらどうなっていたか」という問いが、あとから何度も戻ってきます。ところが制度が変わった、還元率が下がった、子供が進学する——という理由なら、そこで考えが止まります。自分を責める余地がないからです。
💬 情けないですが、これが本音です
私は、やめる理由が欲しかったのではなく、やめても自分を責めなくて済む理由が欲しかったのだと思います。
だから「終わりの条件を先に決めておく」ことが効くのだと、いまは考えています。落ち着いているうちに決めておけば、それは”あとから作った言い訳”ではなく”最初からの約束”になります。同じことをするのでも、自分への説明のつきやすさがまったく違います。
ちなみにこれは、投資に限った話ではないと思っています。使っていないサブスク、見直していない保険、惰性で続いている契約。どれも、金額の問題で残っているわけではありません。止める理由を自分の中に作れないから残っています。
この記事を書いたあとも、同じことが起きました
2026年9月末、2021年から持っていた米国ETFを整理しました。ここでも、自分の意思だけで決めたとは言えません。
最初の口実は「損益通算」でした。配当にかかる税金が重い高配当株を売る。売るなら、含み損のある中国株3倍(YINN)も一緒に売って損を確定させたい。そうすると相殺する利益が足りないので、NASDAQ3倍(TQQQ)と半導体3倍(SOXL)の一部も売る。1つ目の口実さえできれば、あとは口実が口実を呼んで、最後まで動けました。
ただ、売ったお金(約393万円)は、10月にレバナスとNASDAQ100トリプルへ190万円ずつ入れました。ガチホという習慣そのものは終わっていません。中身が入れ替わっただけです。正直、少し気持ち悪さが残りました。
見方を変えると、少し腑に落ちました。持っていた米国ETFは、ヘッジも宝くじ枠も高配当も、買ったときはどれも「こうなったときのための選択肢」でした。その価値が小さくなったので、いまの自分に合う選択肢に乗り換えた。習慣が終わらなかったこと自体は、それほど悪いことではないのかもしれません(この考え方は「選択肢が増えるか」だけで決めている話に書いています)。
残りのSOXLは、次の外からのきっかけが来るまで持っておくつもりです。たぶん今回も、終わらせるのは外からの出来事になると思います。
ちなみに、2021年にレバレッジ型へ寄せた資産が5年でどうなったかは、5年後の答え合わせに書きました。よかったらあわせてどうぞ。
「ステージに応じて積立額を変えればいい」が、できませんでした
よく見かけるアドバイスに、こういうものがあります。
子供ができるまではガンガン積み立てて、子供ができて出費が増えたら積立を抑えればいい。人生のステージに応じて金額を変えればいい。
正しいと思います。理屈としては、これ以上ないくらい正しい。私も読んだときは、そのとおりだと思いました。
そのうえで、私にはできませんでした。
抑えるべき時期は、来ていたんです。手元が薄くなっているのも、数字で見えていました。それでも金額を下げられなかった。罪悪感なのか、もったいなさなのか、自分でもよく分かりません。とにかく、積み立てるという行為そのものを止められませんでした。
💬 同じ形の話を、本で読みました
『DIE WITH ZERO』という本に、せっかく貯めたお金を、罪悪感か何かで使えないまま人生が終わってしまうという話が出てきます。読んだときは他人事のように感じていました。
ですがいま思えば、私の「積立を止められない」は、あれとまったく同じ形です。貯めることが目的になっていて、そこから降りられない。使えないのと、止められないのは、裏表でした。
だから「ステージに応じて変えればいい」というアドバイスに、私はもう一言足したいと思っています。変えられない人がいます。私がそうでした。そういう人は、意志で変えようとするより、変わらざるを得ない条件を先に決めておくほうが早いと思います。
やめたほうがいい人
⚠️ この記事を読んで、こうしないでください
- 相場が下がったから止める。これは私もしませんし、勧めません。安いときに買えなくなるだけです
- 「終われないなら始めない」という結論。始めないほうが損だと思います。決めるのは終わりの条件であって、始めるかどうかではありません
- まだ積み上げの途中なのに、使う練習を始める。順番を逆にすると何も残りません
- 「自分は意志が強いから大丈夫」と思う。私も20年そう思っていました
向いている人
✔️ 以下の方には、たぶん役に立ちます
- 積立を始めるときに、終わりの条件を決めなかった方
- やめたほうがいい気がするのに、なぜか手が止まる方
- 「続けるのが正しい」という言葉に、うっすら縛られている感じがある方
- 積立の金額を、いつのまにか生活のほうを削って捻出している方
これから始める人へ:1行だけ、書いておいてください
私がいちばん後悔しているのは、損したことでも、遅く始めたことでもありません。終わりの条件を、始めるときに書いておかなかったことです。
✅ 今日できること(3分・お金はかかりません)
紙でもスマホのメモでも構いません。いま続けている自動の引き落としを1つ選んで、その横に1行だけ書いてください。
「◯◯になったら、これを止める」
金額でも、時期でも、ライフイベントでもかまいません。私の場合は「子供の大学入学」でした。大事なのは内容ではなく、決めておくこと自体です。決めていないと、外からきっかけが来るまで終われません。
そして——これを書くのは、いま落ち着いているうちにしてください。残高が減り始めてからでは、まともに考えられません。
📝 まとめ
- 習慣を作るのは大変ですが、終わらせるほうがもっと大変でした。投資の出口が難しいのは、相場の話ではなく習慣の話だからだと思います
- 順番は守って始めました。崩れたのはそのあとです。2022年は資産が減るのが苦しく、2023年からは手元が減るほうに苦しさが引っ越しました。線引きは1回やって終わりではありません
- 「ステージに応じて積立額を変えればいい」は正しい。ただし変えられない人がいます。私がそうでした
- 私が終われなかった習慣は3つ。どれも、終わらせたのは外からのきっかけでした(新NISAの開始/還元率の改悪/子供の進学)
- やめる代わりに、「やめていない体裁を保ったまま実質やめる」という妥協案に逃げました。先送りのために毎月の手間を増やしていました
- 次の目標を無理やり作って上書きしようともしました。習慣にしようとして太り、設計にして窮屈になり、3年目でやっと落ち着きました
- 止めるのはボタン1回。それでも押せません。だから、始めるときに終わりの条件を1行書いておいてください
意志の強さの話ではないと思っています。意志で終われないから、条件を先に決めておく——それだけの話です。
やめられなかったことが、悪いことばかりだったわけでもありません。2022年に資産が6割溶けた年、私は売りませんでした。あのとき売らずに済んだのも、たぶん同じ「終われなさ」のおかげです。同じ性質が、あるときは助けになり、あるときは邪魔をする。その記録も置いておきます。
免責
この記事は運営者個人の投資記録と、そのときどきの心情をまとめたものです。特定の金融商品・サービスの購入や解約、積立の継続や停止を推奨するものではありません。適切な判断は、年齢・収入・資産状況・家族構成・目的によって異なります。記載している金額・還元率・サービス内容は2026年9月時点のもので、将来の結果を保証するものではありません。最終的な判断はご自身で、必要に応じて専門家にご相談ください。


